屋根カバー工法は、築15以上のスレート屋根に多く選ばれているリフォーム方法です。
一方で「できない家」「やってはいけないケース」があることを知らずに施工し、数年後に雨漏りや再工事になる例も少なくありません。
この記事では、
- 屋根カバー工法の正しい判断基準
- できる家/できない家の見分け方
- 実際に多い失敗例とその原因
- 葺き替えとの違いと費用の考え方
を、現場で施工している職人の視点で解説します。
「結局うちはどうすればいい?」
その答えが、この記事を読み終えた後に「なるほど、そうだったのか!」と分かっていただけるよう、なるべくわかりやすく解説していきます。
屋根カバー工法とは?

カバー工法とは、既存のスレート屋根を撤去せず、その上から新しい金属屋根を重ね張りする工法です。
- 既存屋根はそのまま残す
- その上に防水シート(ルーフィング)を施工
- ガルバリウム鋼板などの軽量金属屋根を被せる
屋根を「壊して作り直す」のではなく、今の屋根を活かしながら「包み込んで守る」工事だと考えてください。
なぜカバー工法は人気なのか
なぜこれほどカバー工法が選ばれているのか。
理由は「今すぐ大掛かりな工事はしたくない、でも放置もできない」という住宅が、非常に多いからです。
築15〜30年は、屋根の劣化が一気に表面化し始める時期です。
一方で、下地まではまだ致命的に傷んでいないケースも多いため、このタイミングこそがカバー工法を検討する絶好のチャンスといえます。

実は、カバー工法が選ばれる最大の理由は「コスト」だけではありません。
2004年以前の屋根材に含まれる「アスベスト」の処分費用(約20〜40万円)をゼロにできるという、非常に大きなメリットがあるからです。
【最重要】カバー工法ができない家・向かない家
カバー工法は“どの家でもできる工事”ではありません。
まずはここを確認しないと、後々のトラブルにつながります。
瓦屋根(和瓦・洋瓦)は100%不可


瓦屋根は、
- 厚みがあり凹凸が大きい
- 重量が重い
- 金属屋根を固定する下地が作れない
という構造上の理由から、カバー工法は不可能です。
瓦屋根の場合、選択肢は基本的に「葺き替え」一択になります。
野地板(屋根下地)が腐っている家(※状況による)


以下に当てはまる場合、カバー工法は絶対に避けるべき状態です。
- 屋根裏に雨染み・黒ずみがある
- 雨漏りの跡がある
- 屋根を歩くとフワフワ沈む
- スレートが割れすぎている
内部の大規模補修になる可能性もあるので、プロに一度見てもらいましょう。
過去に一度カバー工法をしている家(二重屋根)


カバー工法は原則2回目までとし、3回目の場合は安全性や法律の観点から推奨されません。
二重屋根の上にさらに重ねると、
- 重量増で耐震性が低下
- 湿気が抜けず内部腐食
- 固定力不足
これらが、一気に進みます。
すでにカバー済み → 次は葺き替え一択。
屋根勾配が緩すぎる家


屋根の傾き(勾配)が2.5寸未満の場合、一般的な金属屋根では施工不可、または注意が必要とされるケースが多くなります。
理由はシンプルで、
- 雨水が流れにくい
- 屋根の内部に水が滞留しやすい
- 見えない部分で腐食が進行しやすい
といったリスクが高まるためです。
ただし例外もあります。
立平葺き・ガルバリウム鋼板「スタンビー」などの屋根材は、0.5寸以上の緩勾配から施工可能とされており、適切な工法・条件を守れば対応できるケースもあります。
そのため「勾配が緩い=必ずNG」ではなく、屋根材の種類と施工条件によって可否が分かれるという点が重要です。




劣化が進行したノンアスベスト屋根材


2000年前後に多く使われたノンアスベスト屋根材の中には、経年劣化が早く進行しやすい製品があります。
代表的なものとしては、パミール(ニチハ)やコロニアルNEO(ケイミュー)などが知られています。
これらは、ひび割れ・欠け・層状剥離などの症状が出やすく、塗装をしても数年でボロボロと剥がれてしまうため、塗り替えには向かない屋根材です。
ここで一度「スレート屋根は何年くらいで、どこから判断すべきか?」を以下の記事で整理しておきましょう↓


ノンアスベスト屋根材で注意したいポイント
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 劣化症状 | 反り・割れ・層状剥離など |
| メンテナンス | 塗装が長持ちしにくい |
| 判断ポイント | 下地の状態確認が必須 |
カバー工法との関係
ノンアスベスト屋根材であっても、下地(野地板・垂木)が健全であればカバー工法が可能なケースはあります。
一方で、劣化が激しい場合は、葺き替え工事を検討した方が安全なこともあります。
そのため、ノンアスベスト屋根材=即NGではなく、必ず現地調査のうえで判断することが重要です。
パミールは有名ですが、同様の劣化が見られるノンアスベスト屋根材は他にも存在します。
特定の屋根材名だけで判断せず「ノンアスベスト屋根材全般」として点検する視点が必要です。
太陽光パネルがある家の注意点


太陽光パネルが設置されていない一般的なスレート屋根であれば、カバー工法は今なお「費用・耐久・工期」のバランスに優れた、非常に合理的な選択肢です。
実際、下地が健全な住宅では、葺き替えよりもカバー工法が選ばれるケースが圧倒的に多くなっています。
すでに太陽光パネルが載っている家、または今後設置・再設置を考えている場合は、カバー工法が本当に適しているか慎重な判断が必要です。
注意点は、大きく分けて2つあります。
①屋根重量の増加による構造負担
カバー工法は「既存屋根+新しい金属屋根」という構造になるため、屋根の重量は確実に増加します。
そこに、太陽光パネル(1枚あたり約15kg前後)を複数枚載せると、
- 柱や梁への負担が大きくなる
- 建物全体の重心が上がる
- 地震時の揺れが大きくなりやすい
といったリスクが現実的に出てきます。
特に築年数が経過した住宅では、屋根単体では問題がなく見えても、建物全体の「耐震バランス」に無理が生じているケースがよくあります。
② 太陽光パネル業者による「屋根材指定」の問題
もうひとつ重要なのが、太陽光パネル業者側の施工条件です。
実際の現場では「ガルバリウム屋根には取り付けできないため、既存のコロニアルの上に、再度コロニアルを施工してほしい」
といった、屋根材の指定が入るケースもあります。
太陽光パネル業者によっては、次に使用できる屋根材/使用できない屋根材が決まっている場合があるため、
- 先に屋根を決めてしまう
- 後から太陽光業者に断られる
といったトラブルにつながる可能性もあります。
太陽光パネル設置とカバー工法の落とし穴


もうひとつ見落とされがちなのが、固定方法と防水の問題です。
一般的な太陽光パネルは、屋根材に穴を開け、金具とネジで固定する工法が主流です↑
しかしカバー工法の場合、屋根は二重構造になります。
- 金属屋根
- その下に防水シート
- さらに下に既存屋根と野地板
この状態で下地まで正確にビスを効かせるのは、通常の屋根よりも難易度が一気に上がります。
施工精度が少しでも甘いと、
- 防水層を貫通した部分からの雨水侵入
- 見えない内部での腐食
- 数年後の雨漏り発生
といったトラブルにつながりやすくなります。
さらに注意したいのがメーカー保証です。
太陽光パネルメーカーや金属屋根メーカーの多くは「カバー工法後の屋根へのパネル設置」を保証対象外としているケースがあります。
つまり、高額な屋根工事と太陽光工事をしたのにどちらの保証も受けられない
という、最悪の状況になってしまう可能性もあるのです。
〈職人としての結論〉
今後20年以上、太陽光パネルを安心して使い続けたいのであれば、既存屋根を撤去し、下地から補強できる「葺き替え工事」を選ぶ方が、結果的に安全で確実です。
どうしてもカバー工法で行う場合は、「根に穴をあけない」・「掴み金物」が使える屋根材を選ぶ
など、特殊な条件と工法が必要になります。
この判断を誤ると、数年後に「やり直し工事」になるケースも実際にあります。
葺き替え工事との違い(費用・耐久・工期)


屋根リフォームには、大きく「カバー工法」と「葺き替え」の2種類があります。
| 項目 | カバー工法 | 葺き替え |
|---|---|---|
| 既存屋根 | 撤去しない | 全て撤去 |
| 費用相場 | 80〜150万円 | 150万円~ |
| アスベスト処分費 | 0円(既存屋根を撤去しない為) | 20〜50万円(高額) |
| 工期 | 2日〜4日 | 5日〜8日 |
| 下地の補強 | 原則不可 | すべてできる |
| 耐久性 | 25〜35年 | 30〜40年 |
| 断熱性 | 高まる(二重構造のため) | 普通 |
| 遮音性 | 高まる(二重構造のため) | 現状維持(屋根材・下地による) |
| 向いている家 | 劣化が中程度のスレート屋根 | 劣化が重度・瓦屋根 |
カバー工法は既存屋根が“遮音層”として残るため、特にオークリッジなどの軽量材では雨音がよりマイルドになりやすいのも特徴です。
【判断基準はこれだけ】
下地が健康→カバー工法
下地が不安 → 葺き替え
まずは、このルールだけ覚えておけば大丈夫です。
カバー工法では既存屋根の上から新しい棟板金を設置しますが、下地となる貫板の状態や固定方法によって、耐久性に大きな差が出ます。
また、棟板金と棟瓦では構造や劣化の仕方も異なるため、屋根の種類に合った判断が必要です。
棟部分の違いや交換タイミングについては、こちらの記事で詳しくまとめています↓


カバー工法のメリット・デメリット


カバー工法は、「費用を抑えられる」「工期が短い」といった理由から、近年とても選ばれやすい工事方法です。
ただし、メリットばかりが強調されがちなのも事実。
屋根の状態によっては、カバー工法が向かないケースや、あとから後悔してしまう例もあります。
ここでは、実際の現場判断を踏まえた上で、カバー工法のメリット・デメリットを、分かりやすく整理していきます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 費用が抑えられる 工期が短い 断熱・遮音性が向上 雨漏りリスクが改善 廃材がほぼ出ない | 下地補修ができない 3回目は不可 条件を選ぶ工事 |
- 下地が健全
- 屋根材の条件を満たしている
- 適切な材料と施工が行われる
この3つが揃えば「費用・耐久性・工期」のバランスが非常に優れた、最も合理的な屋根リフォームになります。
カバー工法で選ばれる代表的な屋根材


※画像引用:アイジー工業株式会社
屋根カバー工法では、ガルバリウム鋼板や軽量なシングル材が主に使われます。
実際の現場で、使用頻度の高い屋根材を比較します↓
| 製品名 | 特徴 | 職人目線 |
|---|---|---|
| 【スーパーガルテクト】 | 断熱材一体型のガルバリウム鋼板 | 軽くて強くてとても耐久性高 |
| 【横暖ルーフ】 | 高耐久塗装モデルあり | 遮熱ならこれ |
| 【オークリッジ】 | 非常に軽量なシングル材 | コスパがよく遮音性も◎ |
屋根材選びで失敗しないためのポイント
カバー工法では、ガルバリウム鋼板が基本の選択肢になりますが、必ずしも高性能材一択が正解とは限りません。
「雨音をおさえたい」といった理由から、オークリッジのような軽量屋根材が選ばれるケースも多く、カバー工法との相性も良好です。
また、見積書に「ガルバリウム鋼板」とだけ記載されている場合は、具体的な屋根材名やグレード(SGLなど)を確認しましょう。
屋根材の違いは、耐久性や将来のメンテナンス性に影響します。
費用を10〜30万円下げる賢い選択


安さだけを求めてしまい、結果的に手抜き工事を招いては本末転倒です。
ここでは「工事の質は落とさず、無駄なコストだけを削る」という視点で、節約ポイントを解説します。
外壁塗装や雨樋交換と「足場」をまとめる
屋根工事には欠かせない足場ですが、これだけで15〜25万円前後かかるのが一般的です。
数年後に外壁塗装を考えているなら、今回まとめて行うことで、将来かかるはずだった足場代を丸ごと節約できます。
大手ではなく「自社施工の専門店」に依頼する
ハウスメーカーや大手リフォーム会社の場合、広告費や中間マージン(仲介料)が、工事費に30〜50%ほど上乗せされているケースも珍しくありません。
私たちのような地元の屋根専門店に直接依頼すれば、同じ材料・同じ工程でも、余計な中間コストを省いた適正価格で施工が可能です。
補助金や火災保険が使えないか確認する
お住まいの自治体によっては、断熱改修として補助金が出るケースがあります。
また、台風や雹(ひょう)などの自然災害で屋根が傷んでいる場合は、火災保険が適用される可能性もあります。
※「保険で実質無料」と強調する業者には注意が必要ですが、適正な範囲で申請を行うことは施主様の正当な権利です。



・ルーフィング(防水シート)のグレードを下げる
・棟板金の役物処理を簡略化する
といった方法が、費用調整のために検討されることもあります。
「ルーフィングは何にしますか?メーカー名と商品名を教えてください」これを必ず業者にいうようにしてください。
「粘着ルーフィング以上のグレードでお願いします」
これでもOKです!!
カバー工法の工事手順「8ステップ」
単純に“屋根を重ねるだけ”ではありません。
耐久性を左右するのは、細かな役物処理の精度 です。
ここでは、プロがこだわる8つの工程を解説します。


屋根材だけでなく、屋根裏の湿気・下地の腐食も確認。
「カバー工法が本当にできるか」を見極める最重要工程。


汚れを落として密着性を高め、割れや浮きをチェック。
ここを雑にすると、後の防水性能が落ちるため要注意。


屋根の“本当の防水”を担う大事な層。
ここが丁寧に貼れているかで、10年後の状態が変わる。


屋根材を重ねながら固定していく工程。
材料の重なり方・釘の位置・固定具の種類で耐久性が変わる。


風の影響を最も受ける頂上部分。
下地材の固定が甘いと、数年で飛ばされる原因に。


金物の固定、端部処理、防水ラインをチェックして完了。
「ただ重ねるだけ」ではなく、板金の立ち上げ処理・雨仕舞いが仕上がりのすべてを決めるため、業者の技術差が非常に出る工程です。
よくある5つの疑問


失敗しない業者選びのポイント


- 屋根裏まで点検してくれるか
- 「カバー工法をしない方がいい理由」を論理的に説明してくれる
- ルーフィングの種類を説明する
- 施工事例が豊富で工程写真がある
- 金額が極端に安すぎないか(後から追加料金の典型)
「下地を見ずに、即カバー工法を提案する業者はアウト」です。
まとめ
カバー工法は、スレート屋根で下地が健全な家にとって、非常におすすめできる屋根リフォームです。
葺き替えに比べて、
- 費用を抑えられる
- 工期が短く、生活への影響が少ない
- 断熱性・遮音性が向上しやすい
- アスベスト処分費がかからない
といったメリットを、バランスよく得られるのが大きな魅力です。
ただし、瓦屋根・下地腐食・二重屋根・条件が合わない屋根材など、一部の家では不向きなケースもあります。
そのため、判断基準はシンプルです。
下地が健全 → カバー工法が第一候補
下地に不安 → 葺き替えを検討
この基準を守るだけで、後悔する屋根工事になる可能性は大きく下がります。
カバー工法が「ちょうどハマる」かどうかは、屋根の表面だけでは判断できません。
だからこそeリフォームでは、屋根裏まで含めた徹底的な点検を行い「本当にカバー工法が合う家かどうか」を第一に見極めることにこだわっています。
eリフォームでは、「本当にカバー工法が合う家かどうか」を前提に、屋根裏まで含めた点検を行い、無理な工事はおすすめしていません。
迷いや不安がある方は、まずは弊社の無料診断をご活用ください。
納得のいく答えが出るまで、プロの目線でしっかりとお答えします。












