「お金はかけたくない。それに、道具さえ揃えれば自分でできそうじゃないか?」
ベランダの床のひび割れや剥がれを見て、そう思っている手先が器用で、できることは自分でやりたいあなたへ。
あなたの「節約したい!」という気持ちと「自分でやりたい!」というチャレンジ精神を、素晴らしいと思っています。
この記事は、あなたがDIYに踏み切る前に、知っておくべき「ベランダ防水塗装の超基礎知識」をお届けします。
「知らなかった」で失敗して、二度手間や高額な修繕費を払うことだけは避けてほしい。
その一心で、プロの立場から「DIYでできることと、絶対にやってはいけないこと」の境界線を正直にお伝えします。
塗装の前に必ず確認!あなたのベランダの「防水層」の種類

ホームセンターで塗料を選ぶ前に、最初に知るべきことはたった一つ。
自宅のベランダが「どんな防水層」なのか。
これを知らずに塗料を選ぶと、防水層と塗料の相性不良で 数ヶ月~1年で剥がれる こともあります。
つまり、せっかく手間をかけても無駄になるという、いちばん避けたい結果になりがちです。
防水層の種類一覧
| 防水層 | 見た目の特徴 | DIY難易度・注意点 | 失敗例 |
|---|---|---|---|
| FRP防水 | 硬くてツルツルしている。 浴槽のような素材感。 | 難易度:高。専用トップコート以外はほぼ密着しない。 | ※市販塗料で塗りつぶして 全面剥離→再施工の事例が最多 |
| ウレタン防水 | ゴムのように柔らかい。 最も一般的。 | 難易度:中。下地の劣化があると剥がれやすい。 | ※乾燥不足で膨れ発生→ やり直しになる例あり |
| シート防水 | 塩ビシートが敷かれている。 継ぎ目がある。 | 難易度:高。穴あけ=即アウト。塗装不可のケースが多い。 | ※端部を傷つけて雨漏り発生→張替え工事へ移行するケースあり |

防水層の種類が分からない時点で、DIYの難易度は“すでに高め”です。
まずは、ご自宅のベランダがどのタイプかを正確に把握するところからスタートしましょう。
DIYでハマりやすい「3つの落とし穴」と費用目安
「表面が剥がれているだけだから、上から塗れば大丈夫だろう」
実は、この判断がいちばん危険です。
落とし穴①下地の劣化


ベランダ床の奥には、コンクリートや木材の下地が隠れています。
ひび割れから水が侵入していると、すでに下地が腐っていることも珍しくありません。
DIYのリスク
- 表面を塗っても、中は腐り続ける
- 数年後に床が抜け、大掛かりな補修へ
- 結果、費用が数倍になる
落とし穴②「防水に必要な厚み」が出せない


DIY用塗料で最も難しいのが、“必要な塗膜厚の確保”です。
DIYのリスク
- 薄塗りになる
- 紫外線ですぐ劣化
- 数年で再施工になる
落とし穴③排水口・壁際処理


最も水が集まるのが、排水口周り・壁と床の立ち上がり。
ここは、プロでも神経を使う難所です。
DIYのリスク
- 塗料が薄くなる
- そこから雨水侵入
- 構造材に直接ダメージ
職人が現場でやっている“リアルな工夫”
ベランダ防水は「塗る作業」よりも、塗る前の準備と、乾くまでの管理がすべてと言っても過言ではありません。
ここでは、私たち職人が現場で当たり前のように徹底している“仕上がりと耐久性を左右するリアルな工夫”を包み隠さずお伝えします。
【下地】徹底的に洗浄


まず最も時間をかけるのが洗浄作業です。
高圧洗浄で、
- コケ
- 砂埃
- 古い塗膜の粉
- 排気ガス汚れ
これらを、徹底的に除去します。
汚れが少しでも残ったまま塗ってしまうと、どんな高性能な防水材を使っても密着せず、数年で剥離します。
必要に応じてアセトン拭きで油分除去まで行うのも、職人の基本工程です。
【乾燥】「時間表」より“指を信じる”


施工マニュアルには必ず「〇時間で重ね塗り可能」と書かれていますが、職人は数字だけを信用しません。
現場では必ず
- 指で押してベタつかないか
- 表面がひんやり湿っていないか
- 塗膜の弾力が戻っているか
これらを、自分の感触で最終判断します。
湿度が高い日・風が弱い日などは、同じ塗料でも乾燥時間が平気で数時間ズレます。
乾いていないのに先に進む=失敗一直線。
※不安な場合は、1~2日空けるといいでしょう。
【塗膜】見た目より「量と動き」


防水施工でつい気にしてしまうのが、「きれいに塗れているか」「ムラがないか」という見た目です。
しかし、本当に重要なのは塗膜の“厚み”です。
防水性能は、見た目ではなく決められた量の材料を、正しく動かして塗れているかで決まります。
多くの防水材には、「1㎡あたり何kg使用するか」という規定使用量が明記されています。
~具体例で考えてみましょう~
たとえば、使用量が「1㎡あたり1kg」と指定されている防水材の場合。
- 0.6㎡を施工するなら、必要な量は 600g
この場合、ホームセンターや百均で秤を準備し、600gを正確に量る。
そして、その600gを「1mの範囲の中に収める」イメージで塗り広げていきます。
ポイントは、一気に塗らないこと。
600gを2~3回に分けて塗ることで、
- どのくらいで材料がなくなるのか
- どの厚みが“適正”なのか
といった感覚が、少しずつつかめてきます。
「塗りすぎてダマになる」「薄く伸ばしすぎて膜が足りない」このどちらかに転ぶことがほとんどです。
量を量り、範囲を意識し、動かしながら均一に塗る。
ここが、防水DIYで最も難しいポイントだと言えるでしょう。
【段取り】狭いベランダは“順番”で決まる


戸建てベランダは、
- 道具を置く場所がない
- 塗った床を踏みそうになる
- 出入り口が1ヶ所しかない
など、施工条件がかなりシビアです。
そのため職人は、
- 使用工具を最小限に絞る
- 塗る順番を事前に完全シミュレーション
- 逃げ動線を確保してから作業開始
という段取り勝負になります。
実際「施工は半日、準備に半日」という現場も珍しくありません。



DIYの最大の勘違いは、“塗ることがメイン”だと思ってしまうこと。
実際は「きれいに洗う → ちゃんと乾かす → 正しい量を塗る」
この3つが守れれば、防水はほぼ成功します。
DIYの“現実的スケジュール”


「実際の工程でどれだけの時間がかかるのか」を、“あなたの週末目線”でまとめました。
| 日程イメージ | やること | 所要感覚 | 正直ポイント |
|---|---|---|---|
| 初日(土) | 荷物移動・清掃・高圧洗浄 | 半日~1日 | これが一番しんどい 想像以上に体力を削られます |
| 2日目(日) | 乾燥待ち | 1日 | ほぼ待つだけ ベランダ使用不可 |
| 3日目(別週土) | 下地補修・下塗り | 半日〜1日 | 細かい作業で心が折れやすい |
| 4日目(別週日) | 防水材1回目塗布 | 1日 | 厚み調整が最大の難所 |
| 5日目(翌週) | 防水材2回目塗布 | 1日 | 失敗すると全部やり直し |
| 最終 | トップコート | 半日 | ムラとの戦い |
| 硬化待ち | 完全乾燥 | 1〜数日 | ベランダ使用不可 |
つまり「週末が最低2週、ほぼベランダ作業で潰れる」というのが現実です。
天候に一度邪魔されれば、あっさり3週コースになります。
DIYの「限界ライン」はここ


ここまで読んで、「想像以上に大変そう…」「自分にここまでできるかな?」と感じた人もいると思います。
そこで、職人目線で見た“DIYの限界ライン”をはっきり示します。
DIYでやってもいいこと
- トップコートの塗り替え(防水層が生きている場合):
⇒防水層の表面の化粧直しであれば、DIYは比較的容易です。
ただし、防水層自体にひび割れや水漏れの兆候がない場合に限ります。 - 軽度のひび割れ補修:
⇒髪の毛程度の細いひび割れ(クラック)を、専用のシーリング材で埋める程度。
DIYでやめるべきこと(プロに任せるべきサイン)
下記のサインが一つでもあれば、すでに「防水層の寿命」であり、DIYの守備範囲オーバーです。
- 水が溜まる箇所がある(勾配不良)
- 防水層に破れ・膨れ・穴がある
- 床がふわふわ・ブヨブヨする(下地腐食)
- ベランダ下の天井に雨染み
まとめ
節約とDIYは、どちらも素晴らしい選択です。
手を動かし、自分で直そうとする気持ちは、住まいを大切にする上で何より頼もしい力になります。
ただ、ベランダの防水だけは「挑戦していい領域」と「プロに任せるべき領域」が、はっきり分かれる工事でもあります。
- 自宅の防水層の種類が分からない
- 下地まで傷んでいるのか確信が持てない
- 排水口や立ち上がり、壁との境目が不安に感じる
このように感じているなら、無理にDIYを進める必要はありません。
賢いDIYerは、プロの診断を「無料の情報収集の一環」として使いながら、“自分でやっていい範囲”を正確に見極めています。
あなたの家のベランダがDIYで済む状態なのか、それともプロの出番なのか。
まずは現状を正確に把握することが、失敗しない節約の第一歩です。
プロによる点検・診断を受けたからといって、無理な営業を受ける必要はありません。
「今回はDIYでいこう」「ここだけは任せよう」と判断材料を手に入れるための、安心できる情報収集の場だと考えてください。
まずは気軽に、“プロの目”で今のベランダの状態を確かめてみてください。
それが、あなたの賢いDIYと、後悔しない節約のスタートになります。










